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プロフィール
お名前:衣川俊三さん
出身地:宍粟市→大阪
現住所:宍粟市山崎町
職業:アトリ建築キヌガワ(古民家再生 大工)
年代:40代
移住年月:2004年
大阪から宍粟市へUターン移住
この記事では、兵庫県宍粟市で新しい人生をスタートした先輩移住者の貴重な体験談をご紹介します。
今回お話を伺ったのは、大阪から宍粟市へUターン移住され、古民家再生事業に取り組まれている衣川俊三さんです。宍粟市に移住した経緯や、現在の暮らし、そしてその魅力についてお話しいただきました。
インタビューの様子はYouTubeにもアップされています。

自己紹介
アトリ建築キヌガワを経営しております、衣川俊三と申します。
よろしくお願いします。
普段は家を建てる仕事もしていますが、最近は民家に対してのリノベーションという案件が多いです。

Uターン移住のきっかけ
衣川さんはもともと宍粟市のご出身ということですが、宍粟市に戻られるまでの経緯について教えていただけますか?
あまり自慢できる話ではありませんが、私の場合、20歳の時に大阪で橋梁会社に勤めることになり、全国を回りながら橋を架ける現場監督をしていました。
しかし、大きな事故を起こしてしまい、1年間入院することになりました。
その後、大阪で復帰して頑張っていましたが、体力的にも精神的にも限界を迎え、疲れ果ててしまいました。
それで地元の宍粟市に戻ってくることになりました。
移住後の歩み
宍粟市へもどってからは、どのように過ごされたのですか?
宍粟市に帰ってきてからは、実家の大工から「大工にならないか」と声をかけられました。
しかし、私は大工の仕事を「魔法のような技術を持つ職人集団のもの」と思っており、自分にはできないと断り続けていました。
最終的に「何になりたいんだ」と改めて問われた時に、ふと思い浮かんだのが「現場監督としてリベンジしたい」という思いでした。
それを伝えると「現場監督を目指すなら、大工を学べ」と言われ、大工の道に進むことを決意しました。
宍粟市に戻り感じること
実際に宍粟市に戻られて感じられることはありますか?
大阪で大工を始めた当初、どの地域に行っても、町の方々は応援してくれる言葉をかけてくれるんですけど、実際に手を差し伸べてくれる人や思いやりを示してくれる人は少ないなという印象がありました。
そのため、孤独や寂しさを感じることが多かったです。
しかし、こちら宍粟市では、良くも悪くもほっといてくれないんです。
誰かが何かに気づくんですよ。
「今日は何か違うね」「どうしたの?」と声をかけてくれたりします。
監視されているわけではないけれど、関心を持ってくれているんです。
その関心の持ち方が、私には安心感につながり、そのおかげで、自分を見つめ直す時間を持つことができました。
当時、私は軽い鬱状態でしたが、少しずつ回復していきました。
気づけば大工としてのスキルも身についており、人と向き合えるようにもなっていました。
もちろん、その過程で怒りや悲しみを経験することもありましたが、それをすべて含めても、この場所は素晴らしいと感じています。

移住を考える方へ
宍粟市出身の衣川さんとして、これから宍粟のような地域へ移住を検討されている方へのアドバイスはありますか?
冬のこの季節は、とても静かなんです。
夏や秋は生き物や虫の声、その姿を見ることができて、とてもにぎやかに感じますが、冬になるとそれがぴたっと止まるんです。
それに加えて寒さがあります。
この寒さに対して対策を取る、つまり体を動かして免疫をつけることをしないと、ただ暖を取るだけでは過ごせない場所だと思っています。
体を鍛えるまでいかなくても、常に体を動かすことで健康にもなりますし、気分も変わります。
しかし、寒いからといって家にこもれば、静かすぎて引きこもれる環境になってしまいます。
本当に引きこもりになってしまうので、それは注意してほしいですね。
なるほど、それは非常に重要なアドバイスですね。
時間がたくさんある分、逆に引きこもれるということですね。
引きこもりたい人には良いかもしれませんが(笑)。
そうですね。ただ、もう一つ重要なのは人間関係です。
人が関心を持ってくれるのは良いことなんですが、その関心の仕方が良い時もあれば悪い時もあります。
悪い時には、警戒心を持って見られることもあります。
それは不愉快に感じることもありますが、気にしすぎず、自分自身が堂々としていれば問題ありません。
この場所は「時間を与えてくれる場所」でもあります。
その時間を使って「こういう人なんだ」と受け入れる余裕を持つことが大切だと思います。
慌てず、その場の感情に振り回されないように、淡々と楽しんでもらえたらと思います。
古民家再生事業
衣川さんが民家に対するリノベーションをされていると冒頭でお話いただきましたが、そのお仕事について詳しくお話いただいてもよろしいでしょうか?
過去に行った例で言えば、代々受け継がれてきたお家に関わることが多いです。
例えば、築100年の家では、住んでいる方が気づかない間に痛んでいる部分がたくさんあります。
私自身が事前調査に入らせていただき、今後どうなるかを指摘して、対策をお伝えすることが多いです。
解体せずに残す施工計画を立てて、修復し、次の世代に受け継ぐ。
あるいはその方が生きている間だけでも全うする形で、家を蘇らせるのが私の事業です。

とても喜んでいただけた例として、屋根が大きく傾いている家がありました。
その家の方とは面識がなかったのですが、「瓦が落ちてしまう危険がある」と隣の方を通じてお伝えし、補強と修復をさせていただきました。
特に一人暮らしのおばあさんが施設に入る前に、「どうしても自分で直したい」という思いを持たれていて、そのお手伝いをさせていただいたことがあります。
その際は畳敷きだった部屋を板張りに変更し、車椅子でも動きやすい環境を整えました。

今後の夢や目標
そういった古民家再生事業をされている衣川さんですが、何か今後の夢や目標はありますか?
こういった経験を通じて、古民家再生事業の可能性を感じています。
今後は、使われなくなったり管理が難しくなった古民家を買い取る、もしくは貸していただいてリノベーションを行い、新しいオーナーに利用してもらう仕組みを作りたいと考えています。
関連情報
▪️アトリ建築キヌガワ
Instagram:kingcyang