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プロフィール
お名前:谷口邦章さん
出身地:宍粟市→大阪(Uターン)
現住所:宍粟市波賀町
職業:会社員(機械整備・お米の生産)
年代:30代
移住年月:2014年
大阪から宍粟市へUターン移住
この記事では、兵庫県宍粟市で新しい人生をスタートした先輩移住者の貴重な体験談をご紹介します。
今回お話を伺ったのは、宍粟市で育ち、一度は大阪へ出たもののUターンで移住され、機械整備・お米の生産をされている谷口邦章さんです。宍粟市に移住した経緯や、現在の暮らし、そしてその魅力についてお話しいただきました。
インタビューの様子はYouTubeにもアップされています。

自己紹介
名前は谷口邦章です。
今は宍粟市波賀町上野に住んでいます。
仕事は「飛石頼満商店」という、昔からある会社でやってまして、主に農業機械の修理や整備をしています。
うちの会社では、町の人たちから田んぼを預かって、お米を作る受託作業もやっていて、僕もその仕事に関わっています。

Uターン移住のきっかけ
Uターン移住のきっかけは何だったんですか?
前職はクボタの販売会社で働いてたんですけど、なかなか機械が売れなくて、ノルマが達成できない年が続いてました。
気持ち的にもキツくなってきて、「もうしんどいな…」と思ってた時に、一回実家に帰ったんです。
そしたら親が「地元にもヤンマーの店があるし、同じような仕事もあるぞ」と言ってくれて。
「じゃあ、無理せんでもええかな」と思って仕事を辞め、地元に戻ることにしました。
メーカーは違えど、農業機械の仕組みは同じようなもんやし、「なんとかなるやろ」と思って始めたのが、ちょうど10年前ですね。
大阪での生活
地元に戻る前は大阪に?
はい、大阪茨木市で働いてました。
でも、その前は中学を卒業して奈良の天理高校に進学したのが最初です。
天理高校は定時制で、昼間は仕事をする決まりがあったんですが、水道工事や造園、鉄鋼などいろいろあった中で、僕が割り当てられたのが農業でした。
そこから4年間、昼間は農業の仕事をして、夕方から学校、夜は部活、寮に帰る――みたいな生活でしたね。
米作りや野菜の栽培をやりながら、それを天理教の本部にお供えする、という流れでした。
その後は、奈良県の農業大学校に進みました。
2年間勉強して、就職を考えた時に、農業機械の道に進もうと決めたんです。
ちょうど先輩がクボタに就職していたのを聞いて、「じゃあ自分もやってみよう」と思って、クボタの販売会社に入りました。
それが僕の社会人としてのスタートですね。

宍粟市での暮らしと大阪との違い
大阪で働いて、また宍粟市に戻ってきたわけですが、働く環境の違いは感じましたか?
とにかく田舎ですよね(笑)。
でも、それが自分には合ってるんだと思います。
大阪では会社勤めや建築業など、いろんな仕事があったけど、こっちに戻ってきたらそういう選択肢はほぼないです。
ただ、農業機械の仕事は続けられる環境があったし、ストレスなく働けるのが大きかったですね。
茨木にいた頃は便利で、駅や高速が近くて、何をするにも困らなかったんですけど、そのぶん騒がしくて。
救急車の音や単車の爆音とか、そういう生活のストレスは結構ありましたね。
こっちに戻ってからは、実家というのもあって、ホッとできる場所があるのが大きいです。
いろいろ大変なこともあるけど、10年続けてるってことは、やっぱりこの仕事が自分には合ってるんやろなと思います。
現在のお仕事
そういう経緯で地元に戻られたわけですが、今の仕事は機械整備がメインですか?
そうですね、機械整備がメインで、あとはお米作りもやっています。
機械整備というと、トラクターとか田植え機、コンバインなどですか?
はい、それが主ですが、この辺では畑を耕す小さい機械の修理が多いですね。
あとは草刈り機、チェーンソー、冬場には除雪機の修理もやっています。
大型の機械だけかと思っていましたが、家庭菜園で使うような機械も修理されるんですね?
そうですね。
この辺は年配の方が多く、庭や畑をやる方が多いので、草刈り機や小型の農機の修理依頼もよくあります。

耕作放棄地の問題・現状
農業をしている方から「生産が厳しい」という声をよく聞くんですが、宍粟市の現状についてどう思われますか?
宍粟市でも南の山崎町や一宮町、波賀町、千種町で環境が違いますが、どこも共通しているのは、田んぼがどんどん減って耕作放棄地が増えていることです。
うちの会社でも田んぼを預かって管理していますが、正直、限界があります。
お米作りは「土地利用型農業」と言われるように、田んぼの管理に手間がかかるんですよ。
特に草刈りが大変ですし、最近は獣害も深刻で、イノシシが増えています。
耕作放棄地が増えるのはやむを得ない部分もありますか?
正直、仕方ない部分もありますね。
田んぼは水が必要ですが、水路の掃除をする人が減ってきているんです。
田んぼを手放した人は掃除に出てこないので、残った人たちが全部やるしかない。
でも、これからもっと人が減るでしょうからね。
獣害も大きな問題です。
放棄地に草が生い茂ると、そこに獣が住み着いてしまうんです。
そうなると、被害がどんどん広がるので、できるだけ放棄地を増やさないようにしないといけません。
ただ、その管理を誰がやるのかって話になると、なかなか手を挙げる人はいないのが現状です。

何か解決策はありますか?
やっぱり、田んぼを守るためにはコストをかけてでも柵を張るしかないですね。
それでも獣は入ってくることがありますが、収穫前に全部食われるよりはマシです。
谷口さんは狩猟免許を持っているんですよね?
そうですね。
罠を仕掛けてイノシシを捕まえることはできますが、やつらも賢いので簡単にはいきません。
「採れたら儲けもん」というくらいに思うようにしています。


移住を考えている方へ
移住を考える方へメッセージをお願いします。
田舎に住むと「ストレスがなくてのんびりできる」って思われがちですが、実際は閉鎖的な面もあります。
地元の人とうまく付き合うことが大事だと思います。
全部受け入れる必要はないですが、話を聞きながら暮らしたほうがうまくいきます。
あと、最近では「無農薬の野菜がいい」「化学肥料を使いたくない」という声は多いですが、実際にやるのは簡単じゃないです。
だから、農業に憧れて田舎に来るなら、まずは普通の栽培方法を学ぶのをおすすめします。
いきなり有機にこだわると、周囲に迷惑をかけることもあるので。
有機農業をやると、除草剤を使えないので草が生え放題になります。
そうなると虫が増えて、周りの田んぼにも影響が出る。
さらに、有機JAS認定を取ると、「何メートル以内は農薬を使ってはいけない」みたいな規定があって、周囲の農家に負担をかけることになります。
メッセージをありがとうございます。
こういうリアルな話を知った上で、移住を考えてもらえるといいですね。
関連情報
飛石頼満商店:〒671-4221 兵庫県宍粟市波賀町上野857−1